今回は沖縄の農業や観光業に大きく貢献されている企業【沖縄セルラー アグリ&マルシェ】の稲嶺さんにインタビューしました!
沖縄セルラーという通信事業から分社し、今では沖縄には欠かせないECの一つとなった【沖縄セルラー アグリ&マルシェ】さん。現在に至るまでの経緯を聞いてみた!
では本題に入ります。沖縄セルラーという通信事業から、2013年に【沖縄CLIP】として情報を発信、2016年にはECへの進出と目まぐるしい進化を遂げていらっしゃいます。2017年に「沖縄セルラーアグリ&マルシェ株式会社」として分社し発展されているように思われますが、どういった経緯でそのような進化を遂げていったのでしょうか?
まず1990年の話になります。最近亡くなられてニュースにもなりました京セラ、第二電電創業者の稲盛和夫氏が沖縄懇話会とともに沖縄の経済をより発展・強くしていくという思いを持ちました。これには沖縄県の地元有力企業を筆頭に40社ほどの会社から出資、沖縄セルラー電話株式会社という会社が立ち上がりました。
沖縄の中ではケータイ電話や通信などのサービスが伸びてきました。
その根底には、沖縄の皆様に作っていただいて沖縄の皆様のために事業を運営したいという思いがありました。
沖縄は通信の事業だけですと限りがあります。それ以外の事業として沖縄のために会社として貢献していくことを全社となって考えて行こうという企画が2010年頃に立ちました。
そのうちの2つが【農業】と【観光事業】です。
観光事業は沖縄のリーディング産業なので沖縄の強いところをさらに強くしていく。
農業事業は沖縄の課題を強くしていく。
私がいるのは観光事業となっています。
経緯としては、沖縄の経済発展に更に貢献していくためにECに取り組みだしたという背景があります
いくつかの案の中から観光とECの案が出てきたという感じなんですね
そうです。事業計画なども私たち従業員が沖縄セルラーの当時の社長に対してプレゼンをし、この事業はいける・いけないの判断をしていただいて残ったのがこの二つですね。
観光と農業……ECはその頃からはなかったのですか?
タイミングは)同時に立ち上がりました
独自のECサイト【沖縄CLIPマルシェ】は最初から立ち上げが想定されていたわけではない?本格始動のきっかけは地域の方々への貢献のためだった!
そもそもECは初めから想定されていた事業なんですか?
実はそうではなくて、観光事業を新規事業として立ち上げたのが2013年なんですが、その時は【沖縄CLIP】というタイトルで立ち上げました。
こちらは沖縄県内外に向けて発信して沖縄の魅力を伝えていくというのが目的でした。
伝えることで県外の観光客により沖縄に来ていただいて、沖縄の観光客・観光消費額の増加に貢献していこうということを行っていました。
しかし、情報発信だけですと、企業者様や個人で商品を作っている方々に対して直接的な貢献がしづらかったり見えづらかったりしていました。
なので紹介させていただいた企業者様や作り手様の商品を実際に販売させていただくことをやっていこうというのを2016年に考えて【沖縄CLIPマルシェ】を立ち上げたという流れになります
魅力的なコンテンツが揃った【沖縄CLIP】。その十分すぎる魅力の反面、コンテンツ制作にこぎつけるまでには多くの苦労があった。
【沖縄CLIP】を拝見させていただいて、フォトライターの方がたくさんいて写真もとても綺麗で魅力的なコンテンツだなぁ、と思ったのですが、フォトライターさんから「こういうところと取引をした方が良いよー」というお声などはありますか?
フォトライターさんは外部契約で、通販を始めるタイミングで「あそこの商品良いよ」とか「これから人気出るよ」などのお声がありまして、その時には私が営業で伺ったりなどはありました
ライターさんとの有機的な繋がりを作る中で、営業へ行かれて小規模なところも多かったとは思いますが「うちは取引できないよ」というお声もやはりありましたか?
ありました。コロナ前で観光客も毎年右肩上がりだったので「観光客向けの(リアル店舗での)商品販売などで手一杯なので取引できない」や「時期を改めてきてください」などという方もやはりいましたね。
特に一人でやられている小規模の工芸工房の作家さんなどはそういうケースが多かったです
そういうところとも取引はされていますか?
コロナ禍になり、改めて話をしたらやっぱり取引をしたいという方も中にはいましたね
商材をどのように選んでいるかや採算をどう取っているかも詳しく聞いてみました!
【沖縄CLIP】には、魅力的な商材などが多いですよね。その商材などはどのように探して載せているのでしょうか?
もともと評価が高かったり、SNSとかで検索したらヒットするもの、写真がアップされているものなどがあり「沖縄に行きたいけどいけないから通販で買いたいけど売られてないから欲しいです」というお問い合わせなどがありました。
今はご自身で通販サイトをオープンできるサービスとかもありますが、私たちにお声がけいただいて私たちのサイトに載せていただく選択肢を取っていただいているところも何件かはありますね
自分は20年前に沖縄に来たのですが、一番初めに働いたのがガラス工房でした。
小規模な工芸工房などはネットには弱い職種なのでとても魅力的なサービスだな、と思いながら【沖縄CLIPマルシェ】を拝見させていただいてました
ありがとうございます。おっしゃる通りで、私たちの【沖縄CLIPマルシェ】は固定費用などもかからないで、梱包・発送なども私たちで行っているので手間や費用がかかったりというのはありませんね
採算はどこで取っているのですか?
そこはスーパーさんや小売店さんと同じように仕入れ価格と販売価格の差で採算を出していますね
本当に魅力的ですね。月額固定費などがかかるサービスが多い中でこの取り組みは本当にありがたいと思います。特に小規模な農家さんや工房などからしたらありがたいサービスだと思います
ありがとうございます。
そういう取り組みの中でどのようなアンテナを広げていますか?
幸い、那覇の中心部に事務所がありますので、仕事が終わった後などに国際通りを歩いて、売れ筋の商品や新しい商品などの情報を入手できるので、そこ経由で私たちのラインナップを増やしていくというのは多いですね
それは稲嶺さんお一人でされているのですか?
私と、私以上に情報を集めるのが好きな人がもう一人いて、国際通り以外にも北から南まで、時には離島へ行ったりして情報を集めていますね。その方のおかげで色んな商品に出会えているという状況です
大ヒット商品や逆に売れなかった商品についても聞いてみました。ホームラン商品がある裏側で、苦渋のお別れも中にはあった?
これは見付けてやったぞー!みたいな成功体験はありましたか?
甘酒で名護市の【マキ屋フーズ】さんという会社さんがあるのですが、そこは紅麹を使った甘酒で赤みがかった飲み物なんです。
その商品はりうぼうさんだけが取り扱っていらっしゃって、2019年ぐらいにメーカーさんに話を伺うと「通販はやりたいけどまだこれから」という話がありました。
それで私たちに販売させてくださいという話をして、取り扱わせていただきました。
当時、マキ屋フーズさんの自社サイトと私たちのサイトでしか取り扱いがなかったのですが、その後メディアで取り上げられて「紅麴菌が高血圧を下げる効能がある」という全国放送がありました。
実験結果も放送されて、その放送の瞬間から注文が入りまして、私たちのサイトだけで1日に8000件もありました。
通常では毎月30本入れば良いぐらいの商品でしたが1日だけで8000件です。
全く注文に対応できず、3か月ぐらいお客様の皆様にお待ちいただくことにはなりましたが、実際に効能があった方や、2019年から毎月のようにご注文されるリピーターの方もいらっしゃいます。
私たちのサイトの中では売れ筋商品の一つとなっています
ホームラン商品ですね!
本当にホームラン商品です。記憶に残る事例ですね
取引する中で「うちはできないですよ」という話などはありましたか?「ぜひやりたい」という感じだったんですか?
話は色んなところから来ていたみたいですが、月額費用が5万円かかるという話があったりして、やってみないと売れるか分からないので、難しいかな?という感じでお断りされていたらしいですが、私たちはコストがかからないので載せるだけ載せてみようかという始まりだったと思います
これを梱包・発送までされているのですか?
名護に商品を受け取りに行って宜野湾市にある倉庫で梱包し、全国に発送する形ですね
それはマキ屋フーズさんにとっては大助かりですね
そうですね、作ることに集中していただきたいので
梱包・発送は自社でするのは大変ですもんね
自社でされたら追いつかないと思いますね
これは確かにすごいホームランでしたね
逆にこれは苦労したというのはありますか?
そっちの方が多いのですが、やっぱり知名度がある商品は売れていきます。
ですが、1~2年以内に新発売されて、私たちも取り扱いさせていただいて、商品ページをしっかり作ってSNSなどでも告知をしたのですが、結局あまり売れなくてメーカーさんにも「この感じだったら厳しいね」ということで私たちのサイトからも取り下げられたり、商品自体が終了になってしまったりという事の方が多いと思いますね
県内で他に同様のサービスを行っている会社はあるか?ECとWebサイトを活用した独特な販売方法はどのような発想からきたのか?などについても追求してみました。
写真も撮影してページも作成して発送もしてというのは凄いと思います。なかなか他でもないサービスと思うのですが、県内でそのようなサービスをしている方はいますか?
おそらく固定費をとりながらであれば何件かあると思います
サイトを拝見していて、他と違うなと思ったのはコンテンツが凄く充実していることでした。これは他店などにはない違いですね
商品が今1500点ぐらいあるのですが、そのうちの2~3割ぐらいしかコンテンツ紹介はできていません。
造り手の方に実際に取材に行って商品を作ったきっかけや想い、今後こうしていきたいという思いをしっかりと伝えていくことが必要と思っています。
私たちはそこを特徴の一つとしてやっていきたいと思っています
他のサイトも真似してもおかしくはないと思うほど魅力的なコンテンツですよね。
そういうストーリーの中で物を販売していくという形に魅力を感じたのですが、こういう発想はどこから出てきたのですか?
それは私ではなく、他の立ち上げ当時のメンバーが考えました。
「北欧暮らしの道具店」というサイトを参考にしたのですが、そのサイトでは毎日のように北欧の家具を自分たちで使ったり、料理を食べたりして記事にして「よかったら買ってください」という感じで紹介・販売をしていたんです。 そこを指標にしてやって行こうという動き方はあったようですね
独自のICTで生産されるイチゴ【美ら島ベリー】についてもインタビュー!沖縄の農業に対する想いやスイーツショップさんへの想いなどがわかりました。
美ら島ベリーはICTで生産されていますね。県内で初めての取り組みだったと思うのですが、これはどういった企画だったのでしょうか?
まず、先ほど最初に話しましたが沖縄の観光産業は元々強くてその強みを伸ばしていくという形でした。
そして農業はまだ色々な課題がありその課題を解決させていくということでスタートしました。
私たちの社長がよく行くのですが、離島の南大東島へ行って、その時丁度台風が来てしまったんですよ。
それで野菜が全然島に入ってこなくて、キャベツが1玉1350円になっているのを目の当たりにしました。
それだと島民は買わないよね、という話になり、子どもたちが野菜を食べなかったり健康促進も妨げているのではないか?と思ったようです。
台風が良く来る沖縄で年間を通して安定して野菜を供給することができれば、その大きな課題を解決することができるのではないか?ということで農業事業が会社内で採択されました。
最初はいちごは全くなく、レタスを中心に栽培していました。 南城市に私たちのICT水耕栽培という自社工場がありまして、そこでレタスを作ったのが2013年から始まり、今に至っています
卸先などはどこになりますか?
リウボウさんなどになります。10店舗ほどですね。沖縄セルラーのロゴの入ったレタスが売られています。
それから2018年頃フルーツに目を向けるようになりました。
県内の大手スイーツショップなどと実際に取引していますが、夏場はいちごが国内産があまりない。
外国産ばかりという話があり、その需要にお応えする形でイチゴ栽培を始めました。 2020年ぐらいに最初の出荷を行いましたが、それから作ったイチゴは全て納品させていただいています
これは社内で取り組まれていることなんですか?アウトソーシングなどは行っていないのですか?
イチゴ工場は沖縄セルラー アグリ&マルシェの社員や一部パートの方々でやっています。全部自社内でやっていることですね。 イチゴ工場は大宜味村でやっているのですが、従業員は地元の方々なので雇用には貢献できていると思います。実際に感謝などもいただきました
地元に全力のコマーシャルどおりの哲学があって、バックボーンもはっきりしてるので、見ていて尊敬しますね
稲盛さんが最初に作ったフィロソフィーが今も浸透していると思います。沖縄のためにというのを第一に考えていますね。働いていてもそれは感じます
社内共通概念として持っている感じですか?
そうです!
【ひんやりフルーツマルシェ】についてもインタビュー!導入された瞬間冷凍機の凄さや沖縄のお菓子事情などが分かりました。
ひんやりフルーツマルシェは農業とECが連動した感じなんですか?
イチゴもなのですが、それ以上にマンゴーとパイナップルのギフト需要が多いですが、全体の下手したら5割はギフトに使えないのがあります。
農家さんたちと触れ合う機会があるのですが、黒い斑点が付いたものや形が歪なマンゴーを捨てたり破格で道の駅で売ったりするのはもったいないという話になりました。
そこで私たちの大宜味工場に導入した瞬間冷凍機を使用して、1年を通して新鮮なフルーツを提供できるようにしています。 今はイチゴとパインとパッションフルーツとマンゴーの4品目が冷凍庫に入っていますね
そちらを拝見してみてぜひ利用させていただきたいと思いました
ありがとうございます!
凍眠という技術を利用しているとお聞きしましたが、これを使おうと思ったのは何故ですか?
これは私でない人が探した手法ですね。
一般的な冷凍庫では空気を冷やして凍らすという形で5~8時間とかかかると思いますが、凍眠ですと30分あればほぼ間違いなく凍ります。
一瞬で凍るので細胞も壊れない。鮮度を保てるのでこちらを利用しようということになりましたね。
一応フルーツ以外の品目にも取り組もうという流れもありますが、こちらはまだ言えませんね。
あと、お菓子の原料となるフルーツなどを加工して欲しいという話などもあります。 とある企業では、フルーツ栽培などは沖縄で行い加工は本土で、仕上げと販売は沖縄で行っているため、販売価格が高くなってしまっているので、こちらで請け負えないか?という話はうかがったりします
今後の展望についてインタビューしてみると、沖縄商品をブランディングして県に貢献したい気持ちが分かりました!
今後の展望をお聞かせください
こちらはマンゴーの事例になります。
去年から大宜味村の農家さんと連携していますが、一時期宮崎県の「太陽の卵」というブランドマンゴーができ、沖縄マンゴーのブランド力が低下しているという話がありました。
沖縄マンゴーにはちゃんとしたブランドがないのでマンゴーの名前を含めパッケージなどをブランド化しようという話になりました。
去年「姫君」という名前を作ってパッケージも沖縄の紅型をあしらって他にはないデザインで販売したところ非常に好評をいただきました。
今年も2年目ですが販売が多くあり、リウボウさんのお中元コーナーでも並ばせていただき、来年以降もやっていこうという流れになりました。 良いものはそろっているので、パッケージやブランドを変えて、しっかりとした価格で販売していき沖縄県の経済発展に貢献していこうという流れになっているのが展望の一つですね
例えば「うちのものを取り扱って欲しい」などのお声があったら積極的に取り入れていく考えでしょうか?
お声かけがあればやっていきたいと思っています
ブランディングの取り組みは稲嶺さんが?
私あるいはもう一人のスタッフが行っています。 またロゴなどのデザインができるスタッフも入ってきたので、ブランディングなどがしやすい環境にはなってきていますね
沖縄のために色々と尽力していることが分かりました。ありがとうございます!
まとめ
今回のインタビューは、独自のWebサイトとECを連動させて沖縄の産業に大いに貢献している企業【沖縄セルラー アグリ&マルシェ】さんと、そのマルシェ事業部でご活躍中の稲嶺秀信さんについてでした!
沖縄の農業に対する思いや、魅力的な商材の選び方、大ヒット商品のお話など、色々とお聞かせくださりありがとうございます。
貴社の益々の発展を願い、今回の紹介はここまでとさせていただきます。
ありがとうございました!
今回、取材させていただいた沖縄セルラーアグリ&マルシェ株式会社様の自社サイトはこちら